隠蔽される自殺の実態?

【暗い話題】 先日、フランス人と日本を覆う不気味な空気について議論した。日本人男性の7.2人に1人が自殺をする、、、という驚愕の話は、平和な山奥に住んでいるとまるで実感が湧かないが、実態はどうなんだろう??? これが極端な推計だとしても、統計に現れない自殺がかなり多いことは想像に難くない。
先日も半期で自殺者数1万7千人超という報道があったばかり*1。景気悪化に伴い、状況はさらに悪化しているようだ。派遣切りやワーキングプアの状況で、特に若年層の自殺率がうなぎ登りに上昇していることだろう。
こうなってくると、自分の同窓生や身近な知人に自殺者がいてもおかしくない状況で、もはや他人ごとではない。
 
■日本の自殺者は年間12万人か?!?!

  • 08年の日本における自殺者(自殺と確定された人数)は年間3.2万人*2
  • WHO(世界保健機構)によると、「変死」と区分される人の半分は、自殺者であるとされる(欧州では変死者数の半数を年間の自殺者数に含めている国が多い)*3。で、日本で「変死」とされている死者は、年間16.2万人*4
  • すると、半分が自殺だとして、8万人が「隠れ自殺者」。さらに「失踪者」が、年間で1万3000人。失踪者のほとんどが「自殺者」なので(要出典)、推定自殺者数は少なく見積もっても(かなり乱暴な推計ではありますが!)、、、

3万(確定自殺者)+8万人(変死扱い)+1万人(失踪者扱い)= 12万人

*ちなみに、、、

  • 「変死の半数が自殺者」という考え方には、明確な根拠がないのも確かではある。*5が、、、日本では検死解剖がほとんどおこなわれていないのが実態*6で、かなりの割合で自殺者が「変死」扱いになっていることは言わずもがな。
  • 日本では、死因不明のうち司法解剖/行政解剖されるのがそれぞれ5000体/8500体、で解剖率9%*7。つまり、死因不明16万のうちほとんどは「変死」扱いのまま闇に葬られている。ちなみに、世界の解剖率はアメリカで50%、イギリスが60%、国を挙げて自殺対策に取り組んでいるフィンランドは100%。

 
でもって、こちらの数字をアップデートすると、、、
■リアルな話をすると、日本人の9.5人に1人は自殺で死ぬ。

  • 08年の日本年間死者数は114.3万人*8。このうち、推定12万人が自殺、、、
  • つまり、、、日本人の9.5人に1人は自殺で死ぬ

 
■さらにリアルな話をすると、日本人男性の7.2人に1人は自殺で死ぬ。

  • 日本の場合、自殺者の70.8%は男性*9だから、推定自殺者12万人のうち、男性自殺者は8.5万人。
  • んで、08年の日本男性死亡者数は60.8万人*10なので、、、
  • なんと、日本人男性の7.2人に1人は自殺で死ぬ。。。

、、、というなんとも恐ろしい数字になる。
死因不明社会 (ブルーバックス 1578) 強いられる死 自殺者三万人超の実相 自殺という病—毎年3万人の自殺者を減らすために、あなたができること
 
【追記】
世界の先進国のほとんどにおいて、景気と自殺者数の間に相関があるのに、日本の大本営発表によると98年以降ずっと3万2000人前後で推移している。
一方で、98〜08年の警察取扱死体数のグラフを見ると、「非犯罪死体」(犯罪性がない死因不明の死体)数だけが突出した伸びを示している。

この統計、どう考えてもおかしいのでは?
どうも予算の関係で検死解剖がきちんと行われず、多くの自殺ケース(あるいは他殺の疑いがある場合も含め)が「非犯罪死体」扱いされているのではないかと。。。

*1:『自殺者、半期で1万7千人超…最悪ペース迫る』09/7/27読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090727-OYT1T00840.htm

*2:警察庁 平成20年 自殺概要資料』 http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki81/210514_H20jisatsunogaiyou.pdf

*3:『自殺予防に関する調査結果報告書』(総務省http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/pdf/051201_2_4.pdf

*4:『死因不明の遺体4・7%増の16万体』(読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090202-OYT1T00860.htm

*5:『「変死体」と自殺の関係について』どうにもならない日々 http://d.hatena.ne.jp/NORMAN/20090812/1250045627

*6:『09年3/24 内閣委員会議事録-抜粋』 http://yanagisawa-m.jp/20090324.pdf
  『検視、検案、司法解剖等に関する質問主意書http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a159104.htm
  『わが国の死因究明制度の問題点』藤宮龍也 http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~legal/images/BANfujimiya.pdf
  『扱う死体、14年で倍増なのに…検視官出動は微増』朝日新聞 http://s04.megalodon.jp/2007-1123-1903-54/www.asahi.com/national/update/1123/TKY200711220423.html
  『自殺・異状死に関するメモ』 http://d.hatena.ne.jp/ueyamakzk/20090725

*7:『死因不明社会』海堂尊ブルーバックスhttp://www.amazon.co.jp/gp/product/4062575787/

*8:『平成20年人口動態統計』厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai08/dl/gaikyou.pdf

*9:『平成20年 自殺概要資料』警視庁 http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki81/210514_H20jisatsunogaiyou.pdf

*10:『平成20年人口動態統計』厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai08/dl/gaikyou.pdf